最後に工学研究科の化学系の大学院受験化学の勉強法について書きたいと思います。
大学院受験と言っても今現行で行われている入試制度と、僕が受験した当時とでは全く状況が異なっているかも分かりませんのであくまで僕が受験した1985年当時の僕の体験談として記述していることにご注意ください。
また僕は同志社大学から京都大学の大学院へ外部受験している訳ですが、その様な外部受験生と内部から進学した内部受験生では全く環境が異なっていることにもご留意ください。
さて本題に入りますがまず前提条件として外部から進学する為には、進学する研究室の教授の許可が必要な様です。と言っても教授の許可を頂いたからと言って合格点が変わるという訳でもなく、あくまでその研究室を目指して外部から受験しますよと言う報告です。教授の許可を頂いていても、合格最低点を超えていなければ当然合格できません。今現在ではメールだけで許可を頂いていると言う話もネットで見かけましたし、また僕の場合には研究室の先輩にお願いして教授に報告しただけなので、研究室を訪問したこともありませんし実際に大学院を受験するまで研究室の教授のお顔を一度も拝見したことがありません。
またこれに付随して合格最低点に関して書きますと、合格最低点は専攻ごとに決まる為たとえ人気のない研究室を選択したとしても、最低点が下がるということはありません。但し研究室に配属できる大学院生の定員は決まっている為、人気のある研究室の場合内部受験生がその枠を狙ってくる為外部受験生は志望する研究室の内部受験生 よりも高得点を取得しなければならなくなります。そういった内部受験生が定員の枠がいっぱいいっぱいの場合には、もしかしたら外部から受験することに関して教授の許可が下りないことがあるかも分かりませんが、許可が下りなかったと言う話は僕は今まで一度も聞いたことがありません。
さて前置きが長くなりました。ここからが実際の勉強法に関する方法論です。まず受験科目を確認しておきましょう。現在では京都大学の学科も統廃合されている様なので工学部の化学系は工業化学科だけしか残っていない様ですが、当時は高分子化学科とか化学工学科などがあった様に記憶しています。また現在では学部の学科から大学院の専攻が枝分かれして、大学院の専攻の中に材料化学専攻とか高分子化学専攻、化学工学専攻などがある様で大学院には工業化学専攻と言うのが存在しない様です。ちなみに僕は工業化学専攻です。
当時の工業化学専攻の試験科目は、「英語」「ドイツ語」「物理化学」「有機化学」「無機化学」「分析化学」「工業化学」だったと記憶しています。但し「ドイツ語」は辞書持ち込み可ですが、文法書は不可です。そもそも試験時間内に文法書で調べている様では、全然時間が足りませんしね。なお今現在では試験科目に「ドイツ語」はない様です。「数学」がないやないかと思われた方、そうです工業化学専攻における「数学」の配点は低く、「工業化学」の科目の大問の1題として出題されるのみです。
対策としては入試とか資格試験なども同様ですが、まずは過去問研究です。現在ではインターネットで過去問がダウンロードできる様ですが、当時は各専攻の事務室に自ら貰いに行かなくては入手できませんでした。しかも過去問の問題だけで解答はありません。この辺が内部受験生と外部受験生の条件が変わってくる要素だと思いますが、内部受験生はおそらくですが先輩から過去問の解答を貰うことができると思いますが、外部受験生は当然解答はなく自力で解答を作成するしかありませんでした。
従いまして大学院の入試の対策としては、もっぱら市販の専門書と問題集をやることになります。書く順序が逆になってしまいましたが、そもそも外部から大学院を受験しようと思っていれば1回生の時から志望する大学院の入試科目を調べて入試科目にある学部の授業は必死で勉強する姿勢が必要です。今現在ではシラバスとかあるので、受験計画も立てやすいですが当時はシラバスも存在しませんでした。あったのかは分かりませんが、少なくとも僕はシラバスなるものを一度も見たことがありません。
まず「英語」と「ドイツ語」に関しては1回生の時からの授業の知識で何とかなると思います。問題は専門科目です。「物理化学」は僕は専門書として"アトキンス物理化学"を読んだ後、東京化学同人の"物理化学演習 大学院入試問題を中心に"を何周も回しました。今現在ではこの問題集はⅠとⅡの2冊ある様ですが、当時は1冊しかなく今現在の方が対策が立てやすいと思います。この問題集は非常に良問揃いで、この問題集をやれば大学院の入試問題にも慣れてくると思います。
次いで「有機化学」です。専門書は僕は"モリソンボイド有機化学"をやりましたが、現在では絶版となっている様なので他の専門書を探さなくてはなりません。問題集は「物理化学」と同様東京化学同人の"有機化学演習 大学院入試問題を中心に"と"有機化学問題の解き方―モリソン・ボイドの教科書に沿って"をやりました。東京化学同人の"大学院入試問題を中心に"は今現在ではⅠとⅡとⅢの3冊ある様ですが、当時は1冊のみで「有機化学」に関しても現在の方が対策が立てやすいと思います。
次いで「無機化学」です。専門書は"コットン・ウィルキンソン無機化学"をやりました。問題集は、はっきりとは記憶していませんがおそらく培風館の書籍をやっていたと思います。今現在では「物理化学」「有機化学」と同様"無機・分析化学演習 大学院入試問題を中心に"で良いと思います。僕の当時はこの書籍はまだ発刊されていませんでした。「分析化学」は専門書として廣川書店の"基礎分析化学 理論と実験"と培風館の"定量分析化学"をやりました。ちなみに廣川書店の書籍は同志社大学の授業で使用していた専門書です。問題集の方は同じく廣川書店の"分析化学の理論と計算"をやりました。現在だと先述の"無機・分析化学演習 大学院入試問題を中心に"で良いと思います。
最後に「工業化学」ですが、この科目に関しては僕は数学以外何も対策をしていません。その他の「工業化学」に関する知識は同志社の授業で習得した知識が役立ちました。試験は2日間にわたって行われたと思います。最終日に口頭試問がありますが、僕の当時は何も専門的なことは聞かれませんでした。「京大の問題はどうだったか??」と言うことを聞かれた様に記憶しています。インターネットで今現在の材料化学専攻と高分子化学専攻が含まれる創成化学専攻群の試験時間一覧を調べてみると、僕の当時より専門科目の負担が軽減されている様に感じます。とりあえず「物理化学」と「有機化学」が勝負ですね。その他の専門科目は選択制となっている様で、不得意科目は勉強しなくて良い分対策も立てやすいと思います。
なお蛇足になりますが、当然同志社大学にも大学院は存在していて、僕は同志社の院にも合格しています。以上非常に古い情報なので参考になるかどうか分かりませんが、僕の個人的な感想だと受け止めて頂ければと思います。
児島誉治
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